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  • 2012/09/26/Wed 20:23:29
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黄薔薇二輪

大学の講義が休講になったので、私は予定より早く待ち合わせの公園に来ていた。
ベンチに座ってバッグからタブレットを取り出す。
ネットに接続すると、いつものように予習を始めた。
様々な恐竜の名前と想像図、今、幼稚園児に人気のアニメキャラクターなどを眺めていると
目の前に誰かが立った。
バレーシューズのような黒い革靴、三つ折りにされたソックス、細いふくらはぎから膝を隠す
プリーツスカートは緑色がかった黒でさらに視線を上げるとアイボリーのセーラーカラーには
三つ編みにされたお下げが二本かかっていた。
「・・ごきげんよう」
「ごきげんよう、江利子さま」
通学鞄を後ろ手に持っているので帰宅途中らしい。
「今日は山百合会の活動はないの?」
「ええ、定期試験前ですので。・・江利子さまはiPedでお勉強ですか」
「!? iPadねっ」
「失礼しました。・・このぺド野郎」
「由乃ちゃんっ!?言っとくけどこの前連れてた幼女は山辺先生の娘さんだからねっ」
「えーと、それは人質として?」
「貴女はどうしてそう・・それに私は野郎じゃないし」
「・・じゃあ、ぺド婆ちゃん?」
「何が何でも変態にしたいらしいわね」
お婆ちゃんというのは外れてはいない。
目の前で必死で挑発しようとするこの子も、可愛い孫には違いない。
そう、この鳥居江利子のひそかでささやかな野望には欠かせない人物なのだ。

・・中等部まで私にとって家族とは両親と愚兄達だけだった。
それが高等部に入ると「お姉さま」ができた。
すごく新鮮な人間関係だった。
一年後、今度は「妹」ができた。すごく楽しかった。
しかも、この「妹」は半分「弟」のようで二倍お得だった。
さらに翌年、「孫」までできた。
もっと関係を増やしたい・・でも、これからは自分で積極的に活動する必要がある。
今の目標は「夫」と「娘」を作る事だ。そしてその次は・・
「息子」が欲しい。ただ、こればかりは絶対の保証はない。
「娘」がダブる事もあるだろう。・・講師の薄給で何人まで子供が持てるだろう?
経済的条件さえ許せば男児が生まれるまで産み続ける自信はある。
テレビに出るような大家族になれば、それはそれで面白い。
まあ、そのためにもまず「キス」の壁をクリアしないとな・・
私はタブレットに視線を戻し、予習を続ける事にした。

「まあ江利子さまが焦られるのも無理はありませんが」

あ、まだいたんだ。でも由乃ちゃんがどうして「キス」してない事を知っているのだろう。
私は顔を上げて、余裕の微笑みを浮かべる。
「焦ってなんかいないわよ?」嘘である。内心焦りまくっている。今日こそは「キス」して欲しい。

「江利子さまが衝撃のプロポーズをなされた時は腐っても女子高生というブランドをお持ちでした」

由乃ちゃんは片方の口角を上げ、私を見下ろしていた。
その発言は今自分が腐っているという自覚からか?

「それが今は・・かろうじて女子大生というブランドにしがみついておられる」

・・何が言いたいんだろう?
私が学生でなくなれば山辺先生が興味をなくすとでも?
あいにく、そういう段階はとっくに過ぎている。彼はもう私に夢中なのだ。そう誘導した。
・・そうか!むしろ学生というレッテルが障害になっているのかもしれない。
真面目な彼は、教師としての職業倫理から必死で衝動を抑えているに違いない。きっとそうだ。
そうとなれば私は学生を辞める事もやぶさかではない。
・・芸術学部では「中退」の称号はかえって箔がつくらしいし。

「あと数年後の卒業をひかえ、焦って愛娘を人質に取ってまで結婚を迫るというのも理解できます」
・・理解できるんだ・・
「しかも今なら、例え悪事が露見したとしてもかろうじて実名報道されないとなれば尚更」
「・・・」
私は由乃ちゃんが私の誕生日を把握している事に感動した。
そして以前のキャンキャン犬のような非力な口撃に比べると、なんと進歩したことか!
相手の嫌がりそうな面を落ち着いて突いてくる。・・例え見当違いだとしても。
姉が令で、友人が祐巳ちゃんと志摩子という超ぬるま湯な人間関係だけではこうはならない。
由乃ちゃんの変化は、あの子、菜々ちゃんの影響だろう。初めて会った時、まだ中学生だったのに
全く物怖じせずに私を見つめる眼を思い出した。

「それでも私は黄薔薇ファミリーの一員として、いえリリアンの一生徒として
江利子さまの犯罪は未然に防ぎ・・」

私は由乃ちゃんの両手を包み込むようにして口をふさぐ事にした。
これが相手が蓉子なら文字通り、唇を重ねることで黙らせるのだが。

「ありがとー由乃ちゃん!私の事、心配してくれているのね!」
「え?え?・・そういうわけでは」
「それに学校の体面まで考えて・・もう押しも押されもせぬ立派な黄薔薇さまね!」
「もうっ何言ってるんですかっ」

由乃ちゃんは私の手を振り払うと顔を赤くして走り去って行った。
露骨なほめ殺し攻撃がこんなに効くとは思わなかった。
普段、よほどほめられる機会が少ないんだろうなー。
・・もうちょっと遊んでいたかったが、まあしょうがない。
私はこれから会うダーリンの事を考えることにした。
かって結婚して、子供までもうけているのだから男性としての機能に問題はないはず。
やはり年齢とかで遠慮しているのかなあ。学校を卒業するまで待っているとか。

・・まさかとは思うが聖が私を「スッポン」と評したことを気にしているとか?

まったく、あの悪友ときたら余計なことしか言わないのだから。
そもそも聖だって十分「スッポン」だ。
私は聖と二人で、お互いの身体にキスマークを競って付けまくって過ごした夏の日を思い出していた。
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