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  • 2012/09/10/Mon 02:00:00
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空に向かって8b-3

その精神科医は患者が送迎バスから降りてくる時から観察していた。

(これはスゴイ)

彼はいわゆる「見えてしまう」人間だった。
今も二人の女性のうち、より背の高いほう、その背中(正確には髪)に「ソレ」を確認していた。

「ソレ」は影のような不定形で、色は黒としか表現出来ないが背景を隠す事はない。
彼は「ソレ」以外でそのようなものを見たことがないので、一目で判別できる。

(それにしてもデカイな)

思えば、「ソレ」とは小さい時からつきあってきた。
幼稚園に入る頃には見える事は誰にも言わなくなった。
母親にすら気味悪がられたからだ。
医学部に入って、精神科医を目指したのもそうすれば「見える」自分を「治療」できるかもという期待からだった。
以降、それまで極力見ないふりをしてきた「ソレ」を積極的に考察するようになった。
そして、「ソレ」がつく部位によって様々な精神疾患を引き起こす事に気づいた。
しかし残念ながら彼自身が「ソレ」が見えなくなる(正常になる)方法はわからなかった。
皮肉な事に「見える」事で彼の臨床成績は抜群になった。
何せ、脳のどの部分についているかさえわかれば正確な診断が下せるのだ。
後はその病態にふさわしい治療をほどこせばいい。治療が適切なら「ソレ」は小さくなる。
効果を目で確かめながら様々な治療法を試した。
たちまち彼は有名になり、全国から患者が押し寄せた。けれど同業の医師達の彼を見る目は冷たかった。
彼の診断法が普通でないことは明らかだったからだ。(もちろん見える事は秘密だ)
そんな彼を温かく迎えてくれたのは松平病院の院長だけだった。

(例えどんな方法でも苦しんでいる人を実際救えるのなら)

幸い治療に大掛かりな設備が必要になる事はなかった。
ほぼ理想的な環境で多くの患者を救う事が出来た。

しかし、今回は・・・

これほど大きな「ソレ」は初めて見るし、ついている場所も普通はもっと頭に近いはずだ。

・・とりあえず、患者を診察室に案内しソファで楽な姿勢をとらせた。
付き添いの女性には別室で待機してもらう。

紹介状に一応目を通し、患者のほうにふりかえると、少女の雰囲気は一変していた。

(!)

髪についていた「ソレ」が少女の頭部に移動していた。

「やっとここまで来れた」

「喋れるのかっ!?」
少女の声で普通のしゃべり方なのに、彼には「ソレ」の言葉だとわかった。

「これだけ大きくなればな・・初めまして・・いや、お久しぶり?・・と言うべきかな」

「ここに来た事があるのか?」声がふるえる。

「ああ、皆お前に・・祓われ?・・たんだよ。しばらくこの病院の中を漂っていた」

「それがどうして・・」彼は紹介状を確かめた。「細川可南子はここに来た事はないはずだ」

「院長の孫娘だよ」
「瞳子ちゃん?」
「そう、あの娘が病院の中を歩き回るたびに、勝手に我々は集められた。あの髪型のせいだ」
「・・・」
「ある程度集まると、今度はこの娘の長い髪に引き寄せられた。孫娘の学校でな」
「・・それで僕に復讐しに来たってわけか」
「復讐?いやいやお前には感謝しているのだよ。バラバラだった我々を集めてくれた」
「ふん、そう聞いて僕がまだ協力するとでも思っているのか」
「・・まだ気づいていないのか?お前が見えるのは、お前の目に我々の仲間がついているからだぞ」
そう言うと「ソレ」は一気に拡がって彼の視界を覆った。


「えっ、もう?」
「ええ、完治しましたよ」
スタ祐巳は医者と一緒に出てきた可南子の顔を見て、納得せざるを得なかった。
いわゆる憑き物が落ちたようという表現がピッタリだった。
診察中は、催眠療法でも使ったのか可南子の記憶は全く無かった。
請求された費用も驚くほど少なかった。
スタ祐巳はいくら感謝しても足りないと思えたが、今は一刻も早く送迎バスに乗ってここを立ち去りたかった。
あの医者が怖くて怖くてどうしようもなかったのだ。






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