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  • 2012/08/24/Fri 01:16:50
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空に向かって8b

注意!
空に向かって6の続きですが、別バージョン8aもあります。



スタ祐巳はほっとしていた。
ショーも無事終了した。
なかなか言うことを聞かないモデルもいたけれど概ね成功だった。
もう少し現役のモデルとして活動したい気持ちも、正直あったけれど
今はマネージャー業も楽しい。そしていつか自分で事務所を経営したい。
そのため経理の勉強もしていた。金勘定は大事だ。

そして・・・
スタ祐巳は、喫茶店で目の前に座る少女の顔を眺めた。
今日の彼女のお披露目は満足いく結果だった。
何と言っても今後、最も期待できる有望な新人なのだ。
性格もいいし、頭もよい。ゆくゆくは共同経営者にしてもよい。
もちろん、その前にモデルとしての地保を築いてもらわないといけないが
今日だけで二人のデザイナーから引き合いがあったのだ。不安は全くない。
だから、思わずスイーツを勧めた。彼女はコーヒーしか頼まなかったから。
時給もなかったのだ。それぐらいいいだろう。でも彼女は遠慮した。
自分なりに体重コントロールをしているのかもしれない。
だから無理には勧めない。かわりに自分の分をオーダーした。
この喫茶店は丁寧な領収書をくれるので好みだった。

今日の唯一の反省点といえば可南子のコンポジット(注)を用意していなかった事だ。
あのデザイナーが次回も同じように興味を持ってくれるという保証はどこにもないというのに!

                 (注)写真や体のサイズののったプロフィール票

もっともまだ高校生の可南子にいきなり仕事をさせる訳にはいかなかったし、
そもそも写真を用意できない理由があった。ちょうどいい機会だし、髪を切るように申し渡した。

「・・・」

奇妙な間が、空いた。今可南子は完全にフリーズしていなかったか?そして・・
「私はコーヒーだけでいいです」
「?」・・・よく聞こえなかったのだろうか?
「いやそうじゃなくて、髪を切るって話」

「ええ、お腹空いてないんです」

スタ祐巳はゾッとした。
可南子の表情から冗談を言っているのでも、とぼけているのでもない事がわかったからだ。
これまでの信頼関係が無ければ、「そんなに髪切るのが嫌ならはっきりそうおっしゃい!」
と怒鳴り付けているところだ。
その後、いろいろ会話をしてどうやら髪に関する話題だけ異常があるらしいとわかった。

スタ祐巳は翌日、心療内科を予約した。


「それで先生どうでしょうか?」
スタ祐巳は可南子を待合室に残し、診察室の横の小さな個室で医者と対峙していた。
女医だったのは幸いだった。
「極めて珍しい症例ですね」
可南子やスタ祐巳と並ぶと、小柄な女医は子供のように見えたが言葉には威厳があった。
「一日だけで診断を下すのは危険なんですが、私には解離性同一性障害のように思えます」
「え、それって」
「いわゆる多重人格ですね」
「・・・」
たしかにあの時、目の前にいるのがまるで知らない少女のように見えた。
「・・いろいろと質問をして反応を見たんですが」医者はパソコンの画面を見ながら
説明を続けた。
「髪を切る、髪が抜ける、髪が焦げる等特定の事柄には拒絶反応を示すのに、それ以外は
全く正常です」
「可南子の中に髪に思い入れのある人格が潜んでいるということですか?」
「というか、これはもう髪そのものですね」
女医は不気味そうにこちらをチラリと見た。
「私が不意に(髪綺麗ね)って振ると彼女(ありがとう)って答えたんですよ?」
こういう症例に詳しい医師を知っていると紹介状を書いてくれたが、スタ祐巳には医者が
厄介払いしたがっているように思えた。

待合室では可南子が不安そうな目をして座っていた。座高は普通の子とそう変わらないので
ひどく幼く見えた。
「ースタ祐巳さん、私、おかしいの?」
スタ祐巳は思わず近寄って可南子の頭を胸にかき抱いた。
「大丈夫よ。私が必ず治してあげるからね」

スタ祐巳は目をつぶっていたので、その時ソファーの上に流れていた可南子の髪がゾワリと
動いた事に気づかなかった。



                   つづく ・ ・ ・ かもしれません
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