スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • 2012/07/15/Sun 10:34:51
  • COMMENT:0
  • TRACKBACK:0
  • CATEGORY:未分類

今そこにいる妹5

小笠原家の和室で、私はすっかりくつろいでいた。
座卓の上にはお屠蘇とおせち料理。これはおそらく料亭から仕入れたものだ。
おせち料理は、上品なのにこんなに美味しく作れるものなのかと驚くほどだった。
実家のそれはいかにも保存食という味だったのに。
床の間には南天がいけられていた。
そのみずみずしい色からすると、きっと先ほどまで植えられていたものなのだろう。
けれどくつろげる本当の理由はこういった舞台装置によるものではなく、おそらく清子おばさまのかもしだす、この何とも言えないまったりとした雰囲気のせいだ。
本物のお姫様というのはこういうものか、しかも二十歳の娘がいるとはとても思えない肌のきめ細かさ。
実は妖怪の一種なのではないか?私はそんな妄想にとらわれると、そっと自分の頬を撫でた。
聞けば清子おばさまも、かって紅薔薇さまの称号を冠せられていたとか。
今この和室はさぞかし紅薔薇の香りが充満していることだろう。
現紅薔薇さまは、しきりに蓉子さまも来られれば良かったのにと残念がっておられた。
言葉の端々から大好きという気持ちが伝わってくる。
私と乃梨姉ちゃんは、よく水野蓉子さまのような薔薇さまになるねと先輩方から言われるので少し嬉しかった。
もっとも蓉子さまには「最強の薔薇さま」という評価もあって若干複雑な気分になる。

そういうのんびりとした雰囲気の中、祥子さまは依然くやしがっておられた。どうやら相当負けず嫌いのようだ。
「ちょっと待って。学園祭の時瞳子ちゃんあなた、乃梨子ちゃんと一緒に歩いていたわよね?」
「あ、それ多分私です」お屠蘇をなめながら私は答えた。出し物を姉妹で回るのは一般的な事だ。
「祥子お姉さまったら声を掛けて下さったらよかったのにぃ」
瞳子お姉さまはこういう時、神経を逆なでするような言い方がとても得意だ。
「だって同級生だけで楽しんでいるのを邪魔しちゃ悪いと思って・・」気遣いが裏目に出たわけだ。
清子おばさまは、そもそも気付くような機会がなかったので、そんなにくやしくないのだろう。
ほわほわとした表情で、娘がおしぼりを引きちぎらんばかりに絞っているのを眺めておられた。



「ピンポーン」
屋敷の大きさのわりには普通の音色でチャイムが鳴った。
清子おばさまはおもむろにiPadを取り出すと画面を見て
「あら、白薔薇さんと黄薔薇さん、一緒に来られたわ」と言った。
うわ、あれでカメラ映像がチェックできるのか。私、変な顔していなかっただろうか。
おばさまはそのままiPadを操作して門を解錠された。そういえば屋敷に入ってから暑いとか寒いとか全く感じない。
この広大な屋敷が完全に空調管理されているのだ。見た目は純和風なのに中身は常に最新設備に更新されているのだろう。
門や外壁、そして玄関までのアプローチも立派ではあるが、さりとてこけおどしのような印象はなかった。
どこかさりげないデザインにセンスの良さを感じた。本物の金持ちというのはこういうものなのだろう。

そして、祥子さまはきちんと玄関までゲストを迎えに出られた。
瞳子お姉さまと私も、後に続いた。清子おばさまはここで待っていればいいのにとおっしゃたが立場上それは出来なかった。
紅薔薇さまは座ったまま待たれるようだった。たしかに全員で出迎えては大げさになる。
先ほどは気付かなかったが、大きな玄関ドアにも何らかのアシスト装置がついているようだった。
祥子さまが軽く手を触れられるだけで、ゆっくりと開いていった。
広いポーチには黄薔薇姉妹三人、白薔薇姉妹二人が並んでいた。
私は志摩子さん・・白薔薇さまの着物姿に、しばし見とれていた。

「「あけましておめでとうございます!」」恒例の挨拶の後、男装の麗人が私の前に来た。
「ごきげんよう。あなたが二条XXXちゃん?初めまして、支倉令です」
私が挨拶を返していると、祥子さまは明らかにがっかりされた様子で
「令は知っていたの?」と言われた。どうやら自分が仕掛けられたドッキリを親友にも試したかったらしい。
「ああ由乃から乃梨子ちゃんそっくりの実妹が入学してきたって話は聞いていたから」
「令はいいわね。何でも報告してくれる妹がいて」祥子さまは頬をふくらませた。
(あ、この顔も可愛い・・)妹にするならこんな子がいいな、と失礼な事を考えていると
「でも由乃は自分に都合が悪い事は黙っているから。情報は菜々ちゃんやちさとちゃんが頼り」
だから祐巳ちゃん責めちゃかわいそうよ。と令さま。
紅薔薇さまは、もしやこの展開を読んで部屋に残られたのだろうか?
黄薔薇さまは、ちさとさまの名が出た時一瞬眉をひそめられたが、すぐに悪代官のような笑顔で
「祥子さま。蓉子さまや江利子さまはまだご存知じゃないですよ!」と提案された。
(うわーこの人、自分のおばあちゃんへの意趣返しに全く色違いの私達を利用するつもりだよ)
「そうねえ」祥子さまは廊下を先導して歩きながら思案した。この際相手は誰でもよいようだった。
「あ、でも江利子さまには怪談仕立てのほうがいいかもしれません」乃梨姉ちゃんが提案した。
学園祭の打ち上げで薄気味悪そうに、皆の顔を見回されていたそうな。
人数が一人多い事に違和感を感じられたのだろう。でも初めからいた顔しか見あたらない・・。
「咄嗟に顔をふせたので気付かれてはおられないと思いますが」
「そう・・」自身は全く気付かなかった祥子さまは複雑な表情をなされた。

「あら、でも」
和室にたどり着いた時、祥子さまは気がつかれた。
「それじゃあ聖さまはこの事ご存知なの?」
「ご存知もなにも、そもそもこのドッキリを初めに発案されたのは聖さまです」
乃梨姉ちゃんの言葉には、私もビックリした。
スポンサーサイト

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL
URL
PASS (削除時に必要)
SECRET 管理者にだけ表示を許可する
COMMENT&
DECORATION

TRACKBACK

トラックバック

http://durianbase.blog99.fc2.com/tb.php/49-b00b426c

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。