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  • 2012/06/30/Sat 15:06:51
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空に向かって

可南子は立ち止まると、肩に掛けていたスポーツバッグを両手に持ちかえた。
「結構です。モデルとか興味ありませんから」
渋谷や原宿ならともかく、K駅周辺でスカウトに声をかけられるのは珍しかった。
これまでの経験から初めにはっきりと断るのが肝心だった。
「まあ、そう言わないで話だけでも聞いてくれないかしら?」
女性の声だったので、つい視線を下げてしまったがスカウトの顔は意外に近い場所にあった。
ヒールの分を差し引いても170cmはあるだろう。当の可南子はとっくに180cmの大台は突破していたが。
「あ、私はこういう者です」
差し出された名刺を思わず受け取ってしまったのは、相手の背が高い事に加えスタイルの良さに気を取られたからだった。
「Y.Kエージェンシー?」
「ええ、ご存知かしら?」
それは業界に興味の無い可南子でも知っている、ファッションモデルを中心にしたトップクラスの事務所だった。
「そんな一流事務所がどうして私なんかに」
とうは立っているが十分現役モデルで通用しそうな相手でなければ、偽造名刺かと疑うところだった。
「あら、貴女とても素敵よ?スタイルだけじゃなく姿勢がすごくいい。」
何かスポーツされているのかしら?相手の問いに答える形で断る事にした。
「ええ、今はバスケットに夢中で他の事にかまっている余裕は無いんです」
「もちろん今すぐどうこうという話ではないの。貴女高校生よね。将来の選択肢の一つとして考えてくれないかしら」
もちろん帰って保護者の方に相談してからね。そう言われて可南子はこのスカウトを完全に信用してしまった。
「御両親」ではなく「保護者」。
発言する方は大した違いは無いと思うかもしれないが、リリアンでも離婚や死別で両親の揃わない生徒も珍しくないし、可南子のように三人の人間の顔が浮かぶ者だっているのだ。
それでも、それだけでは請われるまま氏名や電話番号まで教えたりはしなかっただろう。
決定的だったのはスカウトの顔に、どこか福沢祐巳さまの面影を感じた事だった。
そして、可南子のこの時の勘は間違っていなかった。
スカウトは本物で、決して研修料目当ての詐欺などではなかったし、可南子を大事に育てていこうというのも本当の事だった。
それ以降、可南子はスカウトの事を、心の中で「スタイルのいい祐巳さま」と呼んでいた。
そして本物の方は「ずんど・・親しみ易い祐巳さま」と呼ぶ癖がついてしまった。

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