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  • 2012/06/03/Sun 20:33:40
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リリアンニュース

「はい、これが最新版よ」
真美はプリントしたてのリリアンかわら版を紅薔薇さまと黄薔薇さまに渡した。
二人はすぐに読みはじめた。
三年になってから初稿をチェックしてもらっているのだ。
せっかく同じクラスに薔薇さま二人がいるのだ。利用しない手はない。
山百合会のきわどい話題でも薔薇さまのお墨付きとなれば、記事にも重みが増すし、
あらかじめ見せておけば、案外人は文句を言わないものだ。現在、実質的編集責任者である
妹の日出実のフォローにもなる…と、色々後付けの理由はあるけれど、それより何より真美は
二人の友の反応を楽しんでいた。
祐巳さんは一生懸命読んで、どこかしらほめる場所を見つけてくれようとするし、由乃さんは
鵜の目鷹の目で、誤字脱字を見つけては鬼の首でもとったかのように指摘してくれる便利な
校正者だった。もう一人の薔薇さまからクレームが出るのは想像もつかなかった。
(山百合会もチョロいもんよねー)真美は内心舌を出していた。
(?)しかし今回(二学期最初)のそれはいつもと様子が違った。
二人はひそかに眉をひそめ、内容にとまどっているようだった。
「…どうしたの?」
「うん、ここなんだけど…」
祐巳さんが指差したのはメインの記事ではなく、いわばコラムというか、編集後記のような記事で、
他ならぬ真美自身が執筆したものであった。
「…それがどうかした?」
「なんか日々雑感風に書いてあるけど、これって三年松組で起こった事ばかりだよね?」
「学園祭の準備の具合とか…学級新聞かっての」
(やっぱり気がつくか)
「私も受験生だからさ、あんまり取材とかしてらんないし」
すると二人はにやりと笑って声をそろえた。
「鹿取先生に送るつもりなん(だ)(でしょう)」
「くっ」…薔薇さまになってから変に鋭くなったなあ、こいつら。
「だってマンスリーレポート書いてもらうんだから当然送るわよ」
何が悪いと開き直ってみたが、二人のニヤニヤ笑いは消えなかった。
「先生、きっと喜ぶよね」
「…」

真美は先日、電話取材をした。すでに夏休みに突入していたので産休といっても通常運行と
さして変わらないだろうと思っていたら、教師というのは結構出勤するものらしい。
部活をしているものや、山百合会のメンバーなど今までそれとなく気を配っていた事を知った。
真美は教え子を想う気持ちに触れ、つい取材対象に感情移入してしまった。鹿取先生にたしかに
マリア様の心を感じたのだ。…でも本当のマリア様ではないから、何でもお見通しというわけでは
ないから。それなら私が報告しよう。マリア様の目になろう。そう決意した。

記事はそのための布石にすぎなかった。話題のきっかけとして電話取材の折りにいっぱいお話しよう
と紙面に載せていない事準備していた。

そして、この事で真美の中でリリアンかわら版に対する意識が少し変わった。
学内新聞だからといって読者は生徒や教師だけではない。自宅に持ち帰る生徒もいるだろうし
(思えば三奈子お姉さまが、江利子さまスキャンダルを記事にした時も、文字通り父兄の目を
意識していれば、もう少し表現方法も変わっていたはずだ)…この魅力的な仲間達の事、この
素晴らしい学園の事が正しく伝わるように。そんな新聞にしていこう。そう思った。

後に大ジャーナリストと呼ばれる、山口真美の精神的土台はこの時築かれたといってよかった。
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