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  • 2016/07/23/Sat 18:07:05
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バレンタイン企画会議

「皆様、本日はご多忙の中、お集まり下さりありがとうございます」
司会者であり、今回の会議の召集責任者でもある日出実さんが冒頭の挨拶を述べた。
「皆様」といっても実質的な参加者は三名しかいない。
紅薔薇のつぼみ松平瞳子、白薔薇のつぼみ二条乃梨子、そして黄薔薇のつぼみ有馬菜々
の山百合会メンバーであり、残りは主催者側の日出実をはじめとする新聞部の部員達であった。
「いや、夏休みに入ったばかりで特に忙しくもないんだけれど」
トレードマークのおかっぱ頭を少し短くした白薔薇のつぼみが答えた。
……暑さ対策らしい。「ていうかまだ夏休みに入ったばかりだよ?」
バレンタインの話しには早すぎない?と疑問を呈した。
「それにさ」こちらは普段通りのドリル頭で紅薔薇のつぼみが続いた。
……元々うなじがでているし、構造上放熱効果が高いのだろう。
「なんでこの場所なの?」
薔薇の館の会議室でもなく、部室棟の新聞部部室でもなかった。
ここは新館の視聴覚教室だった。伝統を重んじるリリアン女学園ではあるが
パソコン、AV機器などは常に最新のものに更新されている。
どうやらOGによる現物寄付があるらしい。
「エアコンが効いてて快適ではありますが」
最後に珍しくワンレングスをアップにした黄薔薇のつぼみが微笑んだ。
……暑さ寒さには強そうなのに、実は人一倍汗には気を使っていた。
剣道部員としてはそれぐらいで丁度良いのかもしれない。
「もしやバレンタイン企画を前倒しされることをお考えですか?」
他の二人のタメ口に対し敬語が際立っていた。
「いえ、例年と同じ時期を想定しております」
日出実さんは事務的な敬語で答えた。つぼみ達には面倒な役割りに協力して
もらうという意識もあった。
「ただ、今回の企画案では相当な準備期間が必要になる可能性が……」
そこまで聞いてつぼみ達は揃って眉をひそめた。
……いったい、何をやらされるのだろう?
「あっ、皆様にその期間ずっと何かしていただくというわけではありません」
表情を読んで日出実さんがあわてて補足した。
「ただ、あらかじめ素材を提供していただきたく……」
「???」
「……もう少し具体的に説明したほうが良さそうですね」
では、こちらをご覧ください。
そう言うと日出実さんは後ろのスクリーンを振り返った。
同時に教室の照明が少し落ち、スクリーンにどこか見覚えのある風景が映った。
教室の中、渡り廊下、銀杏並木、体育館……明らかにリリアン女学園内の画像が
スライドとして切り替わっていく。
一年生の新聞部員がパソコンで操作しているようだった。
「?」「?」「?」
「Σ(゜Д゜)Σ(゜Д゜)Σ(゜Д゜)」
ある画面に切り替わった瞬間、衝撃が走った。
薔薇の館のビスケット扉の前、そこに日出実さんがいた。
いや、確かにそれは日出実さんだと認識できるのだが決して写実的ではなかった。
どこかデフォルメされて、ゲームのキャラクターのようにも見える。
「……えー、これはAR(拡張現実)技術の応用ですね」
すると画面下に紫色の薔薇のようなマークが現れた。
そのマークは少し震えていたかと思うと、日出実さんに向かって飛んでいった。
いや、もちろん画面上の日出実さんにだが。
二、三回それを繰り返し、ようやくヒットしたのだろう。
日出実さんのキャラは紫色のカードに変身した。
「……おわかり頂けましたでしょうか」
照明が戻ると、そこには現実の(どや顔をした)日出実さんがいた。
「……これで紫薔薇(ムラサキバラ)のつぼみGETだぜ、というわけです」
……めちゃくちゃ語呂が悪かったが何とか噛まずに言えたようだった。
「皆様には、不肖わたくし日出実が今、演じましたキャラを担当していただきます」
「今は説明の為、勝手に画面が切り替わりましたが実際にはその場所に行く必要があります」
「つまり動画撮影機能、通信機能、GPS機能を有する端末が必要になります」
「要するにスマホですね。今回、OGの方から一世代前の機種を相当数寄付していただきました」
「出現箇所は複数考えていますが、カードが出るキャラは一体だけです」
「それ以外は繰り返し出現します。ヒットするとメッセージが得られます」
「皆様にはキャラのモデルだけではなく、当たりも含めた出現箇所、メッセージも担当していただきます」
「何よりこの方式だと、花壇が掘り返されたり、棚の資料が荒らされるという弊害がありません」
「そしてカードの当たりが早い段階で出たとしてもキャラの収集でしばらくは楽しめるはずです」
「問題は……キャラデザインを漫研とか、コンピュータ同好会などに外注するつもりなのですが」
日出実さんは、それまで一気に説明していたのが急に歯切れが悪くなった。
「納期的にどのくらいの時間が必要なのか見当もつきません」
「またキャラデザインは企画の成否にもかかわるのでコンペ形式も検討しております」

「なるほどねえ、そのへんの部活には負担をかけるから私達の力で丸め込めと」
白薔薇のつぼみがニヤリと笑った。
「いえ、そう言うと語弊が……ま、ぶっちゃけそうなんですけどね」

「そこまで、できるんだったらさあ」
紅薔薇のつぼみが面倒くさそうに言った。
「当たりのバレンタインデートもVR(仮想現実)にできないの?」
「それはダメです!」きっぱりと拒否された。

「あの、まさかとは思うんですが」
……黄薔薇のつぼみが不安そうに言った。
「この企画のタイトルってもしや」

リリアンGOにきまっているじゃない!





「日出実さん」

新聞部の部室を出たところで呼び止められた。
「なあに?乃……白薔薇のつぼみ」
まとう雰囲気から、友人としてというより仕事の用事で来たのだと感じた。
「この前観せてもらったデモ映像なんだけど」
彼女は即、本題に入った。こういう単刀直入なところはお気に入りだ。
もちろん友達として、ダラダラととりとめもなくおしゃべりすることもできる。
なんというかON/OFFがはっきりしてて気持ちがいい。
「あの時の日出実さんのキャラデザインは誰が担当したの?」
「…………」こちらも即答しようとしたのだが、口を開きかけたまま絶句してしまう。
「?」
いつものペースで言葉が返ってこないので肩透かしをくらったみたいだった。
「……他の二人もけっこういい出来だと言ってたからあれをベンチマークにして…」
「ゴメン。それは無理なの」思わず遮ってしまった。
「」今度は白薔薇のつぼみが絶句した。
「あれがいい出来だと感じるのは当然なの。だってあれは私がモデルだから」
「……言ってる意味がよくわからない」
「つまりね、あのキャラが私だとどうしてわかったのかってこと」
「……そんなの見ればわかるじゃない」
「そう?じゃあ私って背が高い?低い?髪は長い?短い?眼鏡は掛けてる?」
「え、背も髪も……まあ普通?眼鏡は…………多分…掛けてない……」
「そうでしょ?原作でもアニメでも私に関する外見的描写は一切無いの」
「」
「だから私は'高知日出実'という性格でしか描写できないのよ」
「まあ、メタな視点で見ればそうかもしれないけれど……どうせSSなんだし」
適当な外見を設定したっていいんじゃないの?
「ダメよ」
「なぜ?」
「小説では意外と貴重なキャラなのよ?叙述トリック要員としてね」
「あんたまさか推理小説に出演するつもり?」
「ああ、心配しないでこのURLでは発表しないから」
白薔薇のつぼみは少しうらやましそうに私を見た。

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