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  • 2013/06/23/Sun 15:36:21
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小笠原家の裏庭

「え?お姉さま、小笠原家の薔薇庭園まだご覧になっていないのですか」
瞳子が呆れたような顔で言った。
「うん、そういうのがあるらしいと聞いてはいるけれど」
新年会と遊園地の帰りに寄ったぐらいで、実はまだ数えるほどしか訪問していない。
「もともと裏庭は見事なイングリッシュガーデンだったのですが、祥子お姉さまが
薔薇さまになられたのを記念にお祖父様が追加で庭師に造らせたのです」
親戚として毎年のように小笠原家を訪問している瞳子は、さすがによく知っている。
祐巳は、そもそも屋敷の中だって全部は知らない。
人間双六で回った部屋で全体の六割ぐらいだろうか?
書斎に入った時も、一瞬どこの図書館だと錯覚したほどでもう感覚がマヒしていた。
「確かにGPSを装備しないで、うかつに紛れ込むと遭難する危険はありますが」
「!?」
「……いえ、それはさすがに冗談です」
(うう、また顔に出てしまった)
「まあ時期的に春から初夏にかけてが見頃なのは確かです」
そう言われると、是非とも見学したくなってきた。
「じゃあ次の日曜日でも一緒に行こうよ」
「……申し訳ないですが演劇部の稽古があるんです。それに私は見飽きてますから」
この妹は姉とおばあちゃんが会う時、変に遠慮する傾向がある。
しかし演劇部の活動申請が出ていたのも事実だったので、それ以上はさそえなかった。


その夜、久しぶりに電話をかけた。
初めての時ほど緊張はしなかったけれど、それでも少しドキドキした。
「まあ、祐巳!あなたからかけてくれるなんて!」
祥子お姉さまは珍しくハイテンションだった。
聞けばちょうど庭園に招待しようと準備しているところだったとか。
「それでね、志摩子や由乃ちゃんも一緒にどうかしら?」
交通手段として柏木さんが小寓寺-福沢家-島津家-小笠原家を車で送迎してくれるという。
車両は祥子さまの大きなセダンを使うらしい。
「三人に見せたかったのよ」
…瞳子は柏木さんから、それとなく情報を得ていたのだろう。
祐巳としても、他の二人を誘うのに異存が有るわけもなかった。


約束の日、前日までの雨も止み、かといってそれほど気温も高くない絶好の気候だった。
車は正午前に福沢家についた。
祐巳が後部座席に乗り込もうとしたら、志摩子さんに拒絶された。
柏木さんは島津家の場所を知らないのでナビゲートしろという。
祥子さまの車には最新のカーナビが装備されているはずだが、逆らわずに助手席についた。
柏木さんは、それはもう丁寧に車を運転した。
「こんな運転もできるんですね」祐巳が感心したように言うと
「もし君たちが車に酔ったりしたら僕は酷い目にあわされるんだ」
目が笑っていなかった。かなり言い含められたのだろう。
由乃さんの家までは、祐巳の誘導だけで簡単に着いた。
あと、小笠原家まで祐巳は道を覚える事にした。
後部座席の会話に加わるには二人の声が小さすぎたからだ。
柏木さんに遠慮しているのかもしれない。
左ハンドルの助手席なので、自分が免許をとったらこういう視線になるのかと興味深かった。
(ボンネットの先がよく見えないからクッションがいるな……)

後ろの席ではひそひそ声で女子高生トークが交わされていた。
(よしよし、ちゃんと祐巳さんとなりに座らせたのね)
(それが本当に柏木さんへのお礼になるの?)
(そうよ、ほら嬉しそうじゃない柏木さん)
(運転手してもらうのは申し訳ないと思うけれど)
(祐巳さんだって以前ほど毛嫌いしている訳じゃないからいいのよ)
(でも祐麒さんの気持ちを思うと私はそんなに後押しできないわ……)


小笠原家に着き大きな門をくぐると、車はいつもの駐車場ではなく屋敷の横を裏庭に向かった。
視界が広がると三人の口から思わず感嘆の声がもれた。
それまで小笠原家は門から玄関まで鬱蒼とした森が続き、大きいけれど地味な印象だった。
それが一転して華やかな世界が目の前に現れたのだ。
「屋敷の中からこの庭が眺められるのは家族の部屋ばかりだからね」
柏木さんが皮肉ぽく笑った。
でも、朝起きたら毎日この風景に接する事が出来るのは素晴らしいなあと、祐巳は素直に思った。

薔薇庭園の入り口は四人が横並びでくぐれるほどのアーチだった。
中には祥子お姉さまが立ってお待ちだった。
驚いたのは服装で、何とジーンズのオーバーオール姿だった。
初デート以来、ジーンズも履かれるようになったがこれは反則だと思えた。
髪も上のほうでポニーテールにしてすごく可愛らしかった。
「お姉さまっ」
祐巳は思わず出たヨダレをぬぐうとオーバーオールの胸に飛び込んでいった。
「ほら祐巳あわてないの。……皆も気をつけてね、特にトゲの処理はしていないから」
(それでそんな格好なのかあ)
そういう祐巳も長袖、パンツ姿だった。
(変わったドレスコードだと思ったけれど)
ちなみに志摩子さんはロングスカートだった。由乃さんは
(私が着ると昔のスケ番みたいになるな)と言っていた。

「それでね、皆にわざわざ来てもらったのはこれを見せたかったからなの」
祥子お姉さまが両手で後ろの一角を示した。
一角といってもゆうに5メーター四方はあったのだが、一目でその意図するところがわかった。
「これは……」
「ロサキネンシス?」
「こちらはロサフェティダ?」
「ロサギガンティア?……何て美しい!」

学園の小さな温室で見たそれも、かけがえのないものに思えたけれど
今、眼前に競うように咲き誇るそれらは、息を飲むほど美しかった。

「ここまでするのは結構大変だったのよ?」
「えっ!お姉さまがお世話されたのですか!?」
「うーん、庭師のお手伝いをした程度だけどね」
それでも祥子さまは満足そうに微笑まれた。

そして瞬く間にテーブル、チェアが用意されガーデンパーティーが始まった。
「今日は家政婦の市原さんと三田さんがはりきっちゃって」
新年会の時はいつも里帰りされているので、お料理は初めてだった。
「!!!」
見た目も豪華だったが、一口で三人は声を失った。
「私、こんな美味しいカナッペ食べたの初めて……」
「毎日こういうもの食べてらっしゃるの?」
「え?紅茶の中にフルーツが入っているの?」
キャビアだとかフォアグラだとかわかりやすい高級食材は一切使っていないのに次元の違う味わいだった。
きっと材料から厳選され、細心の注意で調理されたのだろう。
目の前の美しい薔薇と、その香りとも調和するように思えた。
「こういうの何て言うんだっけ?……究極?……至高?」
祐巳は感動していた。
くやしかったのは柏木さんが、楽しそうに、でも当たり前のように料理を口にしていた事だ。
(やっぱり、私なんかとは住む世界が違うんだなあ)

祐巳は気づいていなかった。

以前はそういうもどかしい感情は祥子お姉さまにだけ感じていたのに、
今は柏木優にも感じていることを。


















恋愛ラボとマリみて

現在発売中のまんがタイム9月号恋愛ラボのサイドストーリーが掲載されている
のですが、主人公(真木夏緒)の姉(真木夏帆)が半端ない蓉子さま感を出して
います。
マリみて原作でもエピソードの総量以上にキャラクターイメージの確立されている
蓉子さま。

きっとこんな表情をするんだろうなと感じます。
オリジナルストーリーと同時にマリみての二次創作みたいに楽しむ事もできて
二倍お得です。マリみてファンにおすすめです。
















釈迦みて新刊_01
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