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  • 2013/06/09/Sun 20:38:18
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マリア祭の意義

「マリア祭素敵だったわあ」
「マリア祭がというより薔薇さま方が、じゃないの?貴女うっとりとして壇上をながめてたでしょ」
「だってあんなに近くでお顔を拝見できて、お声も聞く事ができたのよ?」
そう言うと友人はほうとため息をついた。
「それで?やっぱり白薔薇さまが一番だった?」
高等部からの外部入学生である私でも白薔薇さまを「ロサギガンティア」と発音できる。
入学してすぐ仲良くなった彼女から受けた教育の賜物である。
「ええ、もちろん一番お綺麗だった。でも……」
「ありゃ、目移りしちゃった?」
「貴女も見たでしょう?紅薔薇さまのあのお優しそうな表情……お人柄がにじみ出てるような」
「ふーん、じゃファンクラブも移籍する?」
「でも黄薔薇さまの凛とした態度も捨てがたいのよねえ……あんなに華奢なお体なのに」
「……貴女がそんなに節操がないなんて知らなかったわ」
「意地悪言わないで。……全薔薇さまのファンになっただけよ」
物は言い様だな、と少しあきれたが気持ちがわからなくもなかった。
幼稚園の頃からリリアンだという彼女でも薔薇さま方を間近で見るのは初めてだったのだから。

そして、私にとっても印象的な行事だった。

私達のクラスはたまたま白薔薇さまの担当される列だった。
浮かれて無言のまま興奮する友人に苦笑しながら、私はぼうっと白薔薇さまのお顔を眺めていた。
友人の推しメンだからというだけでなく、確かに一番美人だったしお御堂の雰囲気にもマッチして
まるで絵画を観ているような気分だった。
半ば口を開けて白薔薇さまを見上げていると、そんな自分も壇上から見られているのに気付いた。
視線の主は白薔薇さまの後ろに控えて、おメダイの準備などをしている人だった。
眉の上で直線的に切り揃えた、古風なおかっぱ頭の上級生だった。目力があった。
私は初め叱られるのではないかと思った。
ぼんやりしていたのは事実だし、リリアンの作法にもまだよくわからない所がある。
私はおずおずと、その人に視線を合わせた。
するとその人は私を見て、にっこりと微笑まれた。……いや、ニヤリのほうが近いかもしれない。
その瞬間、私はその人の気持ちが理解できた。
……確認したわけではないが、その人は白薔薇さまを自慢しているのだ!
「この人が私のお姉さまなのよ。いいでしょう」と。
若干鼻の穴がふくらんでいた。自分のおもちゃを見せびらかす幼児みたいだった。

……その時から私は、その人から目が離せなくなった。

そして、その人がマリア祭全体を影からコントロールしているのに気がついた。
一見、単純な行事に見えるが粛々と、なおかつある種の緊張感を保ったまま進行しているのは
おメダイの授与の終わった生徒をスムーズに誘導し、次の生徒の場所を確保したり、
順番が最後のほうのクラスがダレて私語等交わさないよう時々視線を送ったり、
リズムよく授与できるようにおメダイを準備したりをさりげなくこなしていたからだ。
隣の、漫画やアニメでしか見た事のないような縦ロールの上級生がそれを効果的に補助していた。

列が進み、その人との距離が詰まるとやっと私の視線に気付いてくれた。
なぜか驚いた様で、振り返って自分のすぐ後ろに誰もいない事を確認してから自分の顔を指差した。
私は思いっきり頷いてやった。そう、貴女を見つめているんですよと。
すると今度は照れたような素敵な笑顔が返ってきた。
つられて私もにんまりとしてしまった。

「……ねえ、何思い出し笑いしているの?気持ち悪い」

友人の声で我に帰った。
何か言い返そうか迷ったがまず、あの人の情報を引き出すのが先だと気がついた。





黄薔薇のつぼみは紅薔薇のつぼみと二人きりになるタイミングに合わせノートを取り出した。
「……調べてきました。彼女は外部入学生ですね」
「ありがとう。悪いわね、山百合会に関係の無い仕事させちゃって」
「そうなんですか?いずれ仲間になるかもとお考えなんでしょう?」
「可能性はあると思うけれど……こういうのは当事者が決める事だから」
「だから白薔薇のつぼみにはノートを見せないんですか?」
黄薔薇のつぼみはマリア祭では、その生徒の存在に気がつかなかった。
彼女自身が途中まで、おメダイを受けとる側に並んでいたからである。
幸い出席番号は一番だったので、おメダイを受け取ってから壇上のお姉さまの補佐に
まわることもできた。……どちらも一生に一度の事だからできれば両方経験するようにと
周囲から言われたのだ。そんな大げさなと思わなくもなかったが、やってみたらそれなりに
楽しかった。……ただ、白薔薇のつぼみとその生徒の出会いを見逃したのは少し残念だった。

「つまり、このノートは将来薔薇さま方が、あの子誰?と言われた時の準備なのですね」
「まあ、そういう事かな」
「わかりました。それではその時がくるまでこのノートは私が責任を持って封印しておきます」
それを聞くと紅薔薇のつぼみは少し目を丸くした。
そのノートに自分自身の相手のデータも書き込まれる可能性に考えが及んだのだろう。
一瞬、何か言いかけたが結局ノートの管理には黄薔薇のつぼみが一番適任であると判断したのだろう。
縦ロールを揺らして「お願い」と答えた。
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