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  • 2013/12/22/Sun 15:18:53
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お姉様の憂鬱

リリアン女子大のカフェテリアで祐巳は祥子お姉さまとお茶を飲んでいた。
朝、たまたま見かけたお姉さまが何となく元気がないように見えたので
心配になって放課後、制服のまま押しかけたのだ。

「そう、祐巳にはわかってしまうのね」

祥子さまはそう言うと、うつむき加減で前に垂れたひとすじの長い髪を
白い指先でかきあげた。

「それで私がお伺いしてもいいですか?何かお力になれるのなら・・・」

祐巳はテーブルの上でホットココアのカップを両手で包み込むようにしながら
上目遣いでお姉さまの顔を見やった。

「そんなたいしたことじゃないのよ。でも聞いてもらえるなら祐巳が最適かも
しれないわね」

お姉さまに頼られた事が嬉しくて、祐巳は思わず膝を乗り出した。

話は数日前の事ー
祥子さまは青山通りで蓉子さまをお見かけしたらしい。
「お姉さま!」
思わず大声でそう呼び掛けてしまったのは祐巳には、とても自然に感じられた。

「でもね、蓉子お姉さまはその時大学の同級生の方達とご一緒だったの」

そして少し赤面した蓉子さまにたしなめられたそうな。
(確かに大したことじゃないな)祐巳はそう思った。
大声で叫んだり、タイが曲がっていたら注意される。リリアンでは日常茶飯事だ。

「外で、お姉さまって呼ぶなって」
(え?呼び方が問題なの?)

「祐巳はまだ高等部だからピンとこないかもしれないけれど」

ー挨拶は「ごきげんよう」で、上級生を「お姉さま方」と呼ぶー
リリアンの文化は案外、世間的に認知されている。
それでも、いやだからこそ現実に目の前で見聞きすると、外部の人達の興味を
嫌でもひきつけてしまう。
決して悪意はないが、パンダを見るような好奇に満ちた視線。
それに堪えきれなくて自然と「隠れリリアン」になってしまうのだとか。
そして、それはこのリリアン女子大においてすらそうなのだとか。
いくら内部進学者が多いとは言え、大学はやはり外部に開かれている。

「私はその事を知っていながら、つい嬉しくて・・・」

祐巳は理解した。
祥子お姉さまの憂鬱は、蓉子さまに気恥ずかしい思いをさせたという後悔の
念も勿論あるだろうけれど、それより自分が犯したささやかな失敗、うかつさ
を許せないのだ。
(負けず嫌いなところはあいかわらずだなあ)

ハンカチを握りしめていた祥子お姉さまを思い出して祐巳は、叱られるだろう
なと思いながらも、頬がゆるむのを止められなかった。
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